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⑤お母さん役 |
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選手の要求、感じ取る力
8月12日の広島戦。ハーフタイムにロッカーの片づけを終えてピッチに戻った。
GK楢崎正剛がベンチに向かって自分の胸の前で両手をぐるぐる回している。スタッフはテーピングをして欲しいのではないか、と話していた。自分だけは楢崎の表情や動きを見た瞬間、「違う」と感じた。
「キーパーグローブがだめになったな」。予備のグローブを持って楢崎の元へ走った。案の定、ボールを外にはじいた際にクロスバーのフックに引っ掛けて右の手のひらの表面が裂けていた。
ホペイロの役割を説明する時、クラブを家庭によくたとえる。選手は「子供」、監督やコーチは「お父さん」、ホペイロは「お母さん」。
試合前には、選手がレガースを着けているか、貴金属は外したかなどを確かめる。「お弁当を入れたか」「教科書を持ったか」と登校前の子供に声をかける気分だ。
試合開始から5分間は選手のプレーを見てからロッカールームに入る。天候に注意しながらスパイクの選択が合っているかを確認する。ハーフタイム中は監督の話はほとんど聞かず、選手の水分補給を見る。いつもより補給が少ない選手にはドリンクを届けたり、体調を聞いたりする。
練習中にコーチらに怒られた選手を、練習後になだめることもある。ただ過保護にはせず、遅刻など生活態度についてはどんどん注意する。
家庭で子供の変化に最も早く気づくのは母親が多いと思う。クラブでも監督やコーチと別の視点を持つことで見えてくるものがある。そのためにも、選手とのコミュニケーションの時間を増やそうと常に心がけている。
どんなに靴磨きがうまくても、どれほど用具の管理が得意でもホペイロは務まらない。選手の要求を敏感に感じ取ることができて初めて自分の仕事は生きてくる。
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